「借金返済」担保の自動車が勝手に処分された場合

光線
発射
状態


主文

1 被告は,原告に対し,62万6000円及びこれに対する平成15年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

主文同旨

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第2 事案の概要

本件は,原告が,貸金業を営む被告において,貸金の担保として原告が所有する自動車1台の引渡しを受け,その後,第三者に当該自動車を処分して,原告の同自動車に対する追求を困難ないし不能とし,もって,当該自動車に対する原告の所有権を侵害し,被告が引渡しを受けた時点における当該自動車の価格相当額の損害を与えたとして,被告に対し,不法行為に基づき,62万6000円及びこれに対する平成15年9月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提となる事実
(1) 原告は,金融業,債務保証業等を,被告は,貸金業,中古自動車販売等を,それぞれ主たる目的とする株式会社である。
(2) A株式会社(以下「販売会社」という。)は,平成13年4月20日,B以下「買主」という。)との間で,別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)につき,以下の約定の割賦販売契約(以下「販売契約」という。)を締結し,買主に対し,本件自動車を引き渡した。
@ 支払総額  代金128万4700円(諸費用・消費税込み)から頭金を控除した残金に下取車残債額を加算した126万円に割賦手数料23万8396円を加算した149万8396円
A 支払方法  平成13年6月から同19年5月まで,毎月2日限り,1万0900円(なお,初回は1万5296円,ボーナス月の8月と1月は7万円)
B 所有権留保  自動車の所有権は,販売契約及び次項(3)記載の保証委託契約の効力発生と同時に販売会社から原告に移転する。
(3) 原告は,平成13年4月20日,買主との間で,同人の販売会社に対する割賦金合計の支払債務につき保証委託契約を締結し,前項Bの所有権留保条項に基づき,本件自動車の所有権を取得した。
(4) 被告は,貸金の担保として,平成14年6月15日,買主から本件自動車の引渡しを受け,そのころ第三者に売却した。
2 争点 
本件の主たる争点は,被告が買主から貸金の担保として本件自動車の引渡しを受けて第三者に売却した行為(前記1の(4))が不法行為を構成するか否か,及びこれが肯定された場合の原告の損害額である。
3 当事者の主張の要旨
(1) 原告
ア 被告の不法行為
貸金業を営む被告は,買主に対する融資の審査時,遅くとも本件自動車の売却時までには,買主に車検証の提示を求め,提示がない場合は自ら登録事項等証明書を取り寄せることにより,本件自動車につき買主を所有者として自動車登録がされていないことを容易に知ることができた。
そして,本件自動車の処分権限については,販売会社に照会すれば,本件自動車の所有権が原告にあることも容易に知り得たものである。
それにもかかわらず,被告は,前記1の(4)記載のとおり,買主から貸金の担保として本件自動車の引渡しを受け,その後,第三者に売却し,原告の本件自動車に対する追求を困難ないし不能とし,もって,同自動車に対する所有権を侵害したものであって,被告に故意又は過失があることは明らかである。
したがって,前記1の(4)記載の被告の行為は,原告に対する不法行為を構成する。
イ 原告の損害
被告の不法行為により,原告は,自動車の価格相当額である62万6000円(平成14年6月時点)の損害を被った。
(2) 被告
ア 被告の不法行為
(ア) 買主は,販売契約に基づく支払債務152万3096円のうち既に31万0796円を支払っているので,既払額に相当する本件自動車の価値を処分する権限がある。
(イ) 被告は,買主から本件自動車を買戻権付きで買い取るに当たり,残存ローンを間違いなく支払う意思があることを約束し,また,支払能力もあることを確認して契約締結に至ったものである。また,被告は,買主から買戻しができないので売却してほしい旨の再三の申入れを受けて第三者に売却したものであるが,その際にも,買主において今後もローンを誠実に支払っていくことを確認している。
したがって,被告には,本件自動車に対する原告の所有権を侵害したことにつき,故意も過失もない。
イ 原告の損害
原告の主張は,否認ないし争う。

第3 争点に対する判断

1 被告の不法行為について
(1) 前提となる事実,証拠(甲1,2,4ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告は,平成14年6月初めころ,買主に対し,本件自動車を担保に20万円を弁済期を3か月後と定めて貸し付けているが,その際,買主から自動車がローン中である旨を告げられ,本件自動車の所有権が販売店ないしはその売買代金に係る融資・保証等をした金融機関等に留保されていることを認識しつつ,買主から,貸金の担保として自動車の引渡しを受けた。
イ 被告は,買主が前項の借入金の返済を遅滞したので,担保権を実行すべく本件自動車を第三者に売却した。
ウ 販売契約及びこれに伴う保証委託契約において,販売会社から原告に移転した本件自動車の所有権は,買主が販売会社に対する賦払金合計の支払債務のすべてを履行した時点で買主に移転する旨,買主は,原告が本件自動車の所有権を留保している間は,善良な管理者の注意をもって本件自動車を使用・保管し,原告の承諾がなければ入質・譲渡・転売・貸与又は担保に供する行為をしてはならない旨が定められている。
(2) 前(1)で認定の事実に,被告が引渡しを受けた時点で,原告が本件自動車の所有権を有していたことについては当事者間に争いがないことを併せ考えると,被告は,本件自動車が所有権留保中であり,買主には所有権も処分権もないことを知りながら,買主から貸金の担保として引渡しを受け,以後,権原なしに占有したうえ,第三者に売却したものであって,本件自動車に対する原告の所有権を侵害したものであると言わなければならない。
(3) この点につき被告は,買主には販売契約に基づく支払債務のうちの既払額に相当する本件自動車の価値を処分する権限があると主張する。
しかしながら,前(1)ウで認定のとおり,販売契約及びこれに伴う保証委託契約において,買主は,販売会社に対する賦払金合計の支払債務の履行の程度にかかわらず,原告が本件自動車の所有権を留保している間は,善良な管理者の注意をもって使用・保管し,原告の承諾がなければ入質・譲渡・転売・貸与又は担保に供する行為をしてはならない旨が定められており,原告と買主間の本件自動車の使用等に関する問題は,これらの約定に従って規律されるものであるから,被告の主張は採用できない。
さらに,被告は,買主に対する融資に当たり,今後も間違いなく残存ローンを支払う意思と能力があることを確認し,また,本件自動車を第三者に売却する際にも,誠実に支払っていくことを確認しているので,本件自動車に対する原告の所有権を侵害したことについて,故意も過失もないと主張する。
しかしながら,原告に対する回答陳述書(甲2),本件と内容を同じくする事件の判決(甲7),及び弁論の全趣旨によれば,買主は,被告からの借入時には他からの借入れもあり,生活がかなり苦しい状況であったところから,割賦金の返済を継続し得るだけの経済的能力を備えていないことが窺われること,被告は,買主に対し融資する際,資産内容について十分調査していないこと,等が認められ,買主が被告に対する返済を遅滞した時点で,販売会社に対する割賦金の支払の継続は期待できないことは明らかであると言わなければならず,被告は,これらの事実を認識しながら,自動車を第三者に売却しているであろうことを総合考慮すれば,被告には,前提となる事実(4)記載の行為によって,本件自動車に対する原告の所有権を侵害したことにつき,少なくとも過失があったことは明らかに認めることができる。
(4) 以上のとおりであるから,前提となる事実(4)記載の被告の行為は,原告に対する不法行為を構成し,被告は,原告に対し,損害賠償責任を負わなければならない。
2 原告の損害について
(1) 前記1(2),(3)に述べたとおり,被告が買主から自動車の引渡しを受けた時点で不法行為が成立するので,原告は,引渡し時の自動車の価格に相当する損害を被ったことになる。
そこで,被告が引渡しを受けた時点における自動車の価格を検討するに,証拠(甲3,7,8)及び弁論の全趣旨によれば,前記価格は,一般の中古車価格の査定,解約車両の評価等中古車の価格に関する種々の事業を行う全国組織を持つ第三者的機関である財団法人C査定協会が,原告の依頼を受け,経済産業・国土交通両省が許可する査定協会の制定に係る「中古自動車査定基準及び細則」並びに「加減点基準」を適用して,各自動車が有するであろう内外装及び全般的機能の減耗衰退状態を検討し総合的に算定したものであることが認められ,特段の反証がない限り,それをもって原告の受けた損害として認めるのが相当である。
(2) 具体的に本件自動車について見ると,証拠調報告書(甲8,乙1)及びDの陳述書(乙2)等によれば,Dは,被告の担当者から資料を見せてもらい,同車の査定を行っていることが窺われるが,前記査定協会の推定価格(小売相当額)を修正する必要があるとする明確な理由は認められず,本件自動車に関する原告の損害は,融資時すなわち引渡し時の価格は62万6000円であるから,同額をもって,本件自動車に係る原告の損害と言うべきである。
3 以上のとおりであるから,原告の請求は理由があり,認められる。

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